借り入れってしておいた方が良いの?「融資の考え方」
創業者から多く寄せられる質問の一つに、
「うちって借入した方が良いの?」というものがあります。
借りないと事業が開始できない場合はさておき、
そうでない場合でも借入はした方が良いのでしょうか?
今回は、そのような疑問について解説したいと思います!
目次
■結論 6か月分のランニングコストが手元にないなら、借入しておいた方が良い!
無借金への憧れを抱く創業者も実際にいらっしゃいます。
事業が問題なく回っていれば、わざわざ借り入れなんてしなくて良いのではないかと。
なるほど、一理あると思います。
ただ、私はよほど潤沢な自己資金がある場合を除いて、顧問先に借入を勧めています。
何故か。理由は2つあると思います。
私が創業者に借入を勧める理由
①事業を継続させるため(守りの理由) … 不測の事態への備え
②事業を発展させるため(攻めの理由) … 選択肢を増やせる
■1つ目の理由:事業を継続させるためについて
1つは、事業を継続させるためです。
この先行き不透明な時代で、ここまで長期間の海外への渡航制限あるいは戦争が起こることを誰が予想したでしょうか。
このような事態が起きても、事業者は事業を継続することが求められます。
事業を変えたり辞めるにしても、様々な作業がありますし、転職すれば良い労働者とは異なります。
このような不測の事態に備えて、一時的な売上ダウンがあっても凌げるように、数ヶ月分のランニングコストは手元に残しておく必要があります。
仕入代や外注費など売上に応じて発生するものは売上が下がったら下がるので大丈夫なのですが、問題は家賃などの毎月一定額必ず発生する固定費です。
固定費を中心として毎月かかる経費をざっと集計し、ランニングコストを把握しておきましょう。
あとはこれの何か月分が手元資金に必要かになりますが、個人的には、6か月分のランニングコストは手元資金として欲しいと考えています(理由は後述します)。
現在の手元資金や自己資金で不足しているのであれば、その足りない分は借入で補っておいた方が安心というのが私の考えです。
そしてここは比較的盲点なのですが、「本当にお金が必要となった時=資金的に悪化している時」なのですね。
そのような場合は、大抵の場合融資の評価が下がりますので、最悪、融資が下りない可能性があります。
つまり、資金的な手当ては早いに越したことはない、あとで手遅れになり得るということです。
現在は利息が極めて低いので、借入によるコストは微々たるものです。
たった数万のコストを払うことで事業への安心を得られるのであれば寧ろ安いものだと思います。
■2つ目の理由:事業を発展させるためについて
先程が守りの話だとするならば、今度は攻めの話です。
「借入で事業を発展できるの?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。
しかしながら、借入の本質はレバレッジです。
つまり、借りたお金を元手に事業を進めて、当初よりも多くお金を手に入れることを目的としたものです。
よく「時間を金で買うための手段が借入だ」と表現されることがありますが、まさしくその通りだと思います。
新規事業を始めるにあたり、事業で得た資金で行おうとした場合、それを貯めるまでに5年かかるとしましょう。
現代のような変化の激しい時代に、5年は時間がかかり過ぎています。いざ始めようとするときに、消費者のニーズが変化してしまっている可能性があります。
このような場合には、最初から借入をして、すぐに事業を始める必要があります。
金で買うべき時間があることが分かって頂けたでしょうか。
また、そのような新規事業を行う予定のない方でも、借入をしていて良かったということがあります。
それは、利益は多いが期間のかかる案件を受けられる選択肢を持てるということです。
例えば数ヶ月等の期間のかかる案件は、入金までのスパンが長く、立替も増える傾向にあるため、ある程度の資金力がないとそもそも受注できないことがあります。
ただ、そのような案件程、利益率が高かったりします。資金力がないと受注できないからです。
借入で手元資金を厚くしていれば、そのような案件を選ぶという選択肢を持てます。
これは、中長期的に見ると、事業を発展させることに繋がるといえます。
実際に、「最初は借入なんて要らないかなと思ってたけど、数ヶ月前に借りといたおかげで良い案件を受けられたよ」という話を何度も受けています。
■いくら銀行から借りた方が良いの?「借入額の判断基準」
まず、借入を申し込む際に、2種類の方法があります。
一つは、借入をして何を購入するのかが決まっている場合の「設備資金」です。
これは、「設備の見積額=借入額+自己資金」になるので、考える余地はあまりないでしょう。
もう一つが、通常経費等への「運転資金」です。これは、通常のランニングコストのための借入なので、借入額に正解がありません。
だからと言って、何も根拠なく極限に高い金額を銀行に申し込むのはナンセンスです。計算ができない人だと思われてしまいます。
個人的には、少し安全にみて6か月分のランニングコストは欲しいと考えています。
その6か月分のランニングコストから現在の手元資金を引いた残りが、借入必要額だと私は考えます。
詳しくは、下記の記事を参照してください。
結論だけ抜き出すと、下記のようになります。
借入申し込み額の決め方(運転資金の場合)
①まずは、借入必要額を決める
借入必要額 = 毎月のランニングコスト×6か月分 - 現在の手元資金
②次に、それが現実的な金額か検討する
・融資の限度額の観点
・自己資金の観点
■どこの銀行から借りた方が良いの?
では、借入をするとして、どこから借り入れるべきでしょうか?
詳しくは、下記の記事を参照してください。創業時に限定して書いてみました。
▶どこの銀行から借りた方が良いの?「創業時の借入先の決め方」
結論だけ抜き出すと、下記のようになります。
借入先の決め方
①基本的には、日本政策金融公庫の一択
②美容室や飲食店など設備資金が必要な場合には、日本政策金融公庫+民間銀行(信用金庫)で対応
※信用金庫は、日本政策金融公庫の担当者に紹介してもらうのが早くて確実!
その他の細かな論点は、随時下記に追加していきます!
■日本政策金融公庫のどの制度を利用したら良いの?
※執筆中
■返済期間、据置期間の目安は?「返済条件の考え方」
※執筆中
■開業後、創業融資を受けるタイミングは?
※執筆中
■実際の事業計画書のフォーマットは
※執筆中
この記事を書いた人
あさがお税理士事務所 代表税理士 伊藤貴文
税理士 / 栃木出身 / 埼玉在住 / 東京勤務 / 3児の父