赤字を避けるにはいくら売上があればよい?「損益分岐点売上の計算方法」

ここでは、事業を継続していくために必要な売上高の計算方法について解説します。

これが具体的な数字で見えていないと、「可能な限り頑張る」という精神論でしか経営ができないことになってしまいます。

逆に言えば、一つの基準値がわかれば、どれくらい良かったかという振り返りも具体的にできます。

個人的には、これは全事業主に必要な考え方だと考えています。

まずは、赤字にならないギリギリの売上高(損益分岐点売上高)の計算方法について見ていきましょう。

あさがお

難しく考えすぎず、

設例で具体的にみていきましょう!

■支出をニ種類に分けてみよう「固定費と変動費」

設例)飲食店(個人事業)

・売上1000万/年
・仕入350万/年 原価率35%
・経費500万/年 (内訳は家賃等の固定費が470万、減価償却費が30万)
・初期投資1000万
 内訳:自己資金300万+銀行融資700万(7年返済)

具体的に計算してみましょう。

損益分岐点の売上高を計算するには、
まずはすべての支出を洗い出し、それを固定費と変動費に分けてみましょう。

固定費と変動費の違い

固定費とは、売上高の増減に関係なくかかる支出家賃、リース料など)

変動費とは、売上高の増減に比例してかかる支出仕入、人件費、広告費など)

設例で言えば、

・固定費 … 経費500万/年
・変動費 … 仕入700万/年

という形で分けられます。

あさがお

分けるのが難しい場合は、

ざっくり「毎月同じような金額がかかる支出=固定費

という形でOKです!

なお、借入返済額100万/年(700万÷7年)も、広い意味で言えば毎月かかる支出に含まれます

それを考慮すると、

・固定費 … 経費500万+融資返済100万=600万/年
・変動費 … 仕入700万/年

という形になります。

■赤字にならないギリギリの売上高を計算してみよう「利益ベースの損益分岐点売上高の計算方法」

ここまでできれば、あとは計算式に当てはめるだけです。

赤字にならないために必要な売上高の求め方(損益分岐点売上高) ※利益ベース

固定費÷(1-原価率)

設例で言えば、

固定費500万÷(1-原価率35%)≒770万

これが赤字にならないために必要な売上高になります。

あさがお

設例では1000万の売上高があるので、

230万(=1000万-770万)だけ余裕があることがわかりますね!

■資金がショートしないギリギリの売上高を計算してみよう「キャッシュフローベースの損益分岐点売上高の計算方法」

ただ、実務的には、先程の借入返済額も考慮する必要があります。

借入返済額100万/年(700万÷7年)も、広い意味で言えば毎月かかる支出に含まれ、考慮しないと資金がショートしてしまいますからね。利益が出るのと資金が回るのはイコールではありません。

計算式は、先ほどのものに二つ加えるだけです。

資金ショートしないために必要な売上高の求め方(損益分岐点売上高) ※キャッシュフローベース)

(固定費+借入返済額-減価償却費)÷(1-原価率)

固定費570万(=固定費500万+借入返済額100万-減価償却費30万)÷(1-原価率35%)≒877万

これが資金ショートしないために必要な売上高になります。先程の利益を出す水準よりも100万近くハードルが上がりました。

(なお、減価償却費は、まだ自分で決算を組んだことのない方にとっては理解が難しいかもしれません。設備投資などが多くない業種の場合は、一旦無視してもらっても良いと思います。)

結果として、この設例の飲食店では、年間の売上高が877万円を下回ると事業継続が難しいことがわかります。

結果として、この設例の飲食店では、年間の売上高が877万円を下回ると事業継続が難しいことがわかります。

これを年877万÷12月→月73万÷25日→日3万(25日営業の場合)÷6,000円→日5人(客単価6,000円の場合)というように分解していけば、より具体的な最低ラインが見えてきます。

■まとめ

STEP1:まずはすべての支出を洗い出し、それを固定費と変動費に分ける

固定費と変動費の違い

固定費とは、売上高の増減に関係なくかかる支出家賃、リース料など)

変動費とは、売上高の増減に比例してかかる支出仕入、人件費、広告費など)

STEP2:下記の計算式に当てはめる

赤字にならないために必要な売上高の求め方(損益分岐点売上高) ※利益ベース

固定費÷(1-原価率)

資金ショートしないために必要な売上高の求め方(損益分岐点売上高) ※キャッシュフローベース

(固定費+借入返済額-減価償却費)÷(1-原価率)

あさがお

実際には、これら以外にも納税や急な支出もあるので多少の余裕分は必要ですが、
まずはこの最低ラインを意識することが重要ですね!

参考にして頂ければ幸いです。

この記事を書いた人

あさがお税理士事務所 代表税理士 伊藤貴文

税理士 / 栃木出身 / 埼玉在住 / 東京勤務 / 3児の父

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