節税手法(倒産防止掛金)
■概要
基本的な制度の目的は、「連鎖倒産の防止」で、以下の2つを本来的な内容としている制度になります。
①取引先の倒産等に備えて、毎月中小機構へと掛金を掛けること
②万が一の場合には、その掛金の10倍までの借入をすることができること
ただし実際には、「掛けた掛金の全額が法人税の経費になる」ことから、節税対策として加入する会社が多いのが実際になります。
■節税メニュー表における位置付け
[法人]
2 法人税等対策
・2-C その他グループ
・2-C-1 倒産防止掛金 ←今回のテーマ
[個人]
1 所得税等対策
・1-C その他グループ
・1-C-1 倒産防止掛金 ←今回のテーマ
■掛け方
①毎月引落での掛金
②前納での掛金
この2つの方法で掛けていき、800万に達すると上限として積立終了になり、引落終了となります。
解約しない限りはそのままの状態となります(決算書に載らない資産がある状態です)。
解約すると、800万全額が口座に戻ってきます。利息等は付きません。
【計算例】
※実際には前納は任意ですし、掛金の減額・増額も可能です。
・第2期の初めに最高額である月20万掛金で引落開始。毎期の期末に満額前納。
【第1期】加入できず
【第2期】支払=経費算入額:480万(毎月20万×12月+前納20万×12月)
【第3期】支払=経費算入額:240万(前納20万×12月)
【第4期】支払=経費算入額:80万(前納20万×4月 ※この時点で掛金800万到達のため掛金終了)
~
【第×期】解約=利益算入額:800万
■留意点
主な注意点は以下になります。
詳しくは申込書4Pのチェック欄を確認下さい。
①掛金納付月数12か月未満で解約した場合は、解約手当金が0になる
②掛金納付月数40か月未満で解約した場合は、解約手当金が元本割れする
∴800万積立完了するまでは解約を考えない方が良いと思います。手元のキャッシュが減るのがデメリットです。
③解約手当金は利益(法人:益金、個人:収入)になる
∴解約時に800万全額が利益になります。そのまま受けると解約時の税金が増えるため、課税の繰り延べです。
④1年以上事業を行っている場合にしか加入できない
∴創業初年度は加入できない
⑤業種によっては加入できない場合がある
∴個人での不動産所得は加入できない
⑥申告書に添付が必要な書類がある
∴法人:「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」、「適用額明細書」
∴個人:「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」 ※任意書式
※忘れると全額経費になりません!!
■この節税手法が効果的となる場合
まずは、何かしらの要因により利益が大きく出た場合に、それを消し込む緊急対応策としての使い方が想定されます。
上記計算例でも示した通り、月々+期末の前納の組み合わせで、最大で支払った480万全額を経費にすることができます。
この480万は、いずれ解約した際には条件さえ満たせば全額戻ってくるものです。その点では、下手な掛け捨てに近い設備投資よりはメリットがあるように思います。そもそも支払った全額が経費になるものは意外と少ないのです。
また、緊急対応策でなくとも、例えば割増となる税率を平準化するような使い方は、長期的に見れば有効な手法となりえます。
例えば法人であれば、利益800万を飛び出る分だけ倒産防止掛金を掛け、割増税率分を節税し、解約時に何かしらの経費を当て込むというやり方です。
なお、解約時の対応策としては以下が考えられます。
・損失が発生している期に解約する
・多額の設備投資や大規模修繕、役員退職金、役員賞与等の多額の経費が発生した期に解約する
それら費用を利益と相殺することで税額への影響を軽減することができます。
この点は保険と全く同じで、要は加入時に出口戦略を考えましょうということです。
実際のところは、いざという時の資金として800万の状態で置いておき、最終的には社長自身の退職金支払に充てるというケースが多いです。